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夜市
2011.06.01 (Wed)
今回も、本の紹介をしたいと思います。

今回紹介する作品は、
恒川光太郎さんの「夜市」です。

なんか面白い本ない?
と聞かれたら、まずオススメする作品のひとつです。

この「夜市」は、第12回(2005年)日本ホラー小説大賞を受賞し、
第134回直木賞候補にもなりました。
しかも、恒川さんのデビュー作品です。

ホラー小説というジャンルに属していますが、ゾクゾクする怖さではなく、
「千と千尋の神隠し」のようなファンタジーっぽさのある作品です。

(ストーリー)
小学生の時に迷い込んだ夜市で「野球の才能」と引き換えに自分の弟を売った。
しかし、弟を売ってしまった事に罪悪感を抱き続け、弟を買い戻すため再び夜市を訪れる…。

現実には存在しないであろう世界にもかかわらず、
こんな世界が本当はあるのではないか?
と思わせるリアルさ。
イメージが鮮明に頭のなかに浮かび上がる描写が素晴らしいと感じる作品です。

幻想的で、妖しい
不思議な世界観。

恒川作品は、文章が簡潔で綺麗。
洗練された無駄のない文章+テンポにより、
読んでいて引っかかる感じが全くないのです。(←私的にはですが…)
グイグイ恒川ワールドに引き込まれ、
自分がその場に居て傍観しているような。
不思議な感覚に陥ります。

併録されている「風の古道」も「夜市」同様、不思議な世界に迷い込んでしまうお話です。
私は、どちらかというと「風の古道」の方が好きです。
子供の頃の感覚が蘇り、とても懐かしいのです。

不意に見つけた抜け道をドキドキしながら進んで行く感覚。
薄暗く暮れかかった景色を怖いと思った感覚。
道に迷い、家に戻れるだろうか?と不安になった感覚。
あのゾワゾワしたイヤーな感覚を思い出しました。
言葉から浮かんでくる風景も、古き良き日本。
奇麗な景色がパーっと頭の中に広がるのです。

どちらも80ページ程度と短いお話ですが、読み応え抜群です。
本当に綺麗な文章で、読みやすい作品だと思います。
気になった方は、是非一読してみて下さい。
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