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映画とTVドラマの違い
2008.11.06 (Thu)
人気TVドラマ「ガリレオ」の劇場用作品「容疑者Xの献身」の動員が300万人をオーバーして、興行収入38億円を突破する大ヒットしています。

「ガリレオ」は放映時からHDDレコーダーで録画して見ていたのですが、オーバーな演出と強引な謎解き、毎週豪華なゲスト俳優が出演してシブい演技を見せてくれるので、大好きでした。
映画化は放映当初から計画されており、テレビ放映で人気を獲得して劇場動員に繋げるという、テレビ局主導型の映画ビジネスとしては、まさに典型的なパターンです。

普段ならTVドラマの映画化作品は絶対観に行かないのですが、11月1日が映画の日で1,000円で観れるので「容疑者Xの献身」を観に行きました。

東野圭吾のベストセラーにもなった原作小説は読んでなかったのですが、TVドラマを観るような気楽さもあって、良い意味で期待せずに鑑賞しました。

結論から言って、非常に良くできた作品でした。
演出、演技、撮影、編集など、どれもがバシッ!と映画としてのクオリティーに達しており、見応えのある作品となっていました。

福山雅治や柴崎コウのTVドラマのような活躍を期待するとガックリくるかもしれませんが、映画の狙いはまさにそこにあったと思います。

そもそも映画とTVドラマの違いとは何なんでしょうか?
今回、僕が気付いたのは大きく3つです。

一つ目は「時間的制約」です。
起承転結を基本とする作劇法は同じなのですが、TVドラマは1話45分で構成されており、CMが入る15分おきに場面展開をしなければいけません。
そのため全体を4つのパートで区切って演出します。
CMが入るのは絶対条件なので、秒単位で15分ごとに次の展開を考えつつ、起承転結を構成します。
逆に映画は、TV局都合の時間的制約を受けずに制作できるため、起承転結のタイミングは監督の腕次第となります。
「なんだ、秒単位で違うだけじゃん」と思う人もいるかもしれませんが、映像制作において「秒」単位の違いはテンポを左右する非常に大きな要因となります。
もっと厳密に言うと編集担当者は「コマ(フレーム)」単位で編集をしているワケです。

二つ目は、撮影フォーマットです。
最近はTV番組でも16:9で撮影される事が多いとはいえ、TVドラマ出身のカメラマンは、たいてい映画撮影の経験が少ないため、無意識に4:3の画角で撮影してしまいがちです。
これは16:9特有の横長の画角を上手く使わないため、劇場で観るとダイナミックさに欠け、映画特有の画面設計が損なわれてしまう原因になります。

三つ目は、ストーリー。
最近のTVドラマでは残酷な描写やセクシャルな描写は、自主規制の名目で表現が抑えられてきました。
なので、リアリティのあるストーリーではなく、どこか荒唐無稽な非日常的なストーリーになりがちです。
これは逆の事も言えるのですが、映画では意識的にリアリティを追求するあまりに「面白みに欠ける」という事もたまにあります(笑)

「容疑者Xの献身」では、まさにここがキモとなっており、TVドラマの派手な演出を一切排してリアリティのある演技と演出を全編貫き通し、映画ならではの表現をしていました。
ひとつひとつのシーンを丁寧に描き、ワイドスクリーンならではの画面設計で登場人物の心理状態を表現して、さもすれば普通のサスペンスになるところを見応えのある人間ドラマに昇華していました。

まさにTVドラマ版には無い「質の高さ」が、従来のファンのみならず、初めて「ガリレオ」に触れる観客をも福山雅治や柴崎コウの出演シーンが短くても満足させて、評判を呼んだのだと思います。
実際に観客のレビューでも軒並み高評価で、原作ファンをも唸らせる出来となっているそうです。


TVはTVの演出、映画では映画でしかできない演出に徹したスタッフの勝利といえるでしょう。
新作映画としては今更感がたっぷりですが、オススメです(笑)

ちなみに毎月14日はTOHOシネマズデイなのでTOHOシネマであれば、好きな作品を1,000円で鑑賞する事ができます。


ウエダ
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